北米品種の日本ワイン

日本ワインというと、甲州など日本古来種に加え、マスカット・ベーリーAなどの欧米交配種、それに加えて、近年ではメジャーなところからマイナーなところまでヨーロッパ品種が作られるようになってきているけれど、ここで見逃せないのはコンコードやナイアガラといった「北米系品種」。
ヨーロッパでは、この北米系品種をワインにすることはほぼないし、アメリカワインでも、「コンコード種」以外はほとんど見かけません。主要品種はピノ・ノワールとかシャルドネとかヨーロッパ品種みたい。詳しくデータ出したわけじゃないけど。

日本でのデータは、国税庁の資料から概算を出してみると、白で43%以上、赤で31%以上が、北米品種。ざっとみても日本ワインの三分の一以上は、外国生まれの「北米系品種」と言っていいということになります。
ちなみにこの数字には日本で交配された北米系品種=国産北米系(マスカット・ベーリーAとかブラッククイーンとか)は、含まれていません。含めると、数値が判明しているだけでも、優に半数以上が北米系品種です。

最近では、メルローやカベルネ・ソーヴィニヨン、シャルドネなどのヨーロッパ品種(欧州系)も増えてきている感じもするのですが(単独品種では増えてるかどうか、まだ未検証)、日本ワインでは、もともと「生食・醸造」兼用のぶどう品種からワインが作られていた経緯もあって、北米系品種が圧倒的に優勢なのですよね。
ちなみに、甲州などは古来種、グラフの国産欧州系には、古来種やヤマブドウとの交配種、リースリング・リオンとヤマソーヴィニオンが入ります。このカテゴリーは、遺伝子的にはヨーロッパ系です。

ここで、日本ワインに使われている北米系品種(日本交配種を除く)を使用順からリストアップ!

1.ナイアガラ(2709トン)白
 ナイアガラと言えば北海道(1066トン)……と思うと、意外に1位は長野県(1166トン)。その差、100トン……が多いのか少ないのか、この2道県で80%以上。
 「ぶどうジュース」そのままワインになったような、甘い香りと酸味、飲みやすくて、ごくごく飲んじゃうと、アルコール度は他のワインとさほど変わりがなかったりするので、フラフラになっちゃう危険も!
 「ワインって、ぶどうから作ってる割にはぶどうのニオイしないよね?」と、思ってる人にはぜひ試してみてほしい。
 生食用兼用だけれど、実が房からはずれがちな欠点も。先日もスーパーで注意書き入りで売ってた!
 コンコードとラブルスカ種(アメリカ系)の交配種、純粋な?アメリカっ子。

この甘い香りの元が「フォクシー・フレイバー」と言って、主要な成分が「フラネオール」。北米系品種には、大なり小なり(作り方にもよるけど)あります。
これを、どう楽しめるかが、北米系品種を味わう重要なファクトだと思います。

2.コンコード(1824トン)赤
 アメリカぶどうの代表。日本ではほぼ長野県産(1820トン)。ぶどうジュースのウェルチにイメージされるぶどう。出自については、「ベイリーのルーツを探る」からどうぞ。

3.デラウェア(1446トン)白
 夏の一番最初に生食用で売り出される小粒のたねなしブドウ。ワイン用の産地としては、山形、山梨、ついで大阪。
 ラブルスカ種とヴィニフェラ(ヨーロッパ種)の交配種とデータには出てくるけれど、詳細は不明。wikiには「アメリカ原産の自然交雑種」とある。

4.キャンベル・アーリー(1116トン)赤
 主力産地は、北海道、宮崎、岩手。特に宮崎ではワイン用ぶどうの56%がこのぶどう。
 出自はコンコード系とマスカット・ハンブルグ(マスカット・ベーリーAの親)系。系図的にはマスカット・ベーリーAの遠縁的存在(イトコかハトコって感じ)かな?
 巨峰の祖先。
 生食用だけれど、産地以外では出回らないとか。

5.ポートランド(132トン)白
 北海道優良品種でもあり、生産地はほぼ北海道一択(125トン)。耐寒性があり、強烈なラブルスカ香がある、生食用。出自は、コンコード系のチャンピオンとさまざまなラブルスカ種。ただ、一系統にホイニッシュ&サヴァニャン(プティ・メリエ)を含んでいるイザベラが入るので、どこかにヨーロッパ品種の素質を感じるかも?(耐寒性だったりして。プティ・メリエはシャンパーニュ地方のぶどうなんですよね) 

ここからは、主要10品種から外れるので、数値は参考までに。

☆アジロンダック(112トン:山梨県)
 山梨の勝沼あたりでしか栽培しないとあるので、112トンがほぼ日本全体の総量かも?
 強烈なラブルスカ香。いちごあめー!です。色も赤いしね。
 実がぽろぽろするので生食用出荷には向かず、一時は減っていたけれど、最近、ワイン用として増えてます。辛口(糖度は低い)だけれど、ものすごい甘い匂いのする不思議なワインも出てきています。
 出自は、ポートランドの項で出てきたイザベラの変異種(たぶん)。
 私は結構好き! 勝沼に行くと買っちゃう!

☆スチューベン
 生食用でも見かけるニューヨーク生まれのぶどう。寒いところを好む種なので、日本では東北地方が主産地。青森(全国の80%)とか山形とか。国税庁の日本ワインデータには出てこないけれど、ワインになったものは見かける。白やロゼも!
 出自は、ウェインとシュリンダンとなっていて、系図をたどると、ミルズやコンコード、イザベラ、スキアバ・グロッサなどが出てくる。かなり複雑だけれど、ポートランド同様、ラブルスカ種とヨーロッパ種をいろいろに交配した品種。ただ、こっちは黒ぶどう。日本には昭和27年に持ち込まれたとか。
 シャインマスカットの祖父。

☆ミルズ
 かつては山梨で結構栽培されてた品種だけれど、今はかなりの希少種。黒ぶどうだけどワインにすると色が薄かったり、栽培が難しかったりするみたい。
 サンセミヨンの系図の中に出てくる品種。笛吹の親。出自は、ラブルスカ種のクレベリングとマスカット系のマスカット・ハンブルグ。
 キャンベル・アーリーとは、異母兄弟的存在。

 とりあえず、日本ワインになってるアメリカっ子は、これくらいかなぁ?

 これらの品種については「北米系品種の相関図」で、出自を解説しています。遺伝子的に、どのブドウとどのブドウに関係性があるのかわかります。